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03月

新型コロナウイルス感染症の影響に鑑み貸与型奨学金の返還期限の猶予を求める緊急声明

奨学金問題対策全国会議は、高額な学費と奨学金の返済に苦しむ人たちの相談・救済活動を行いながら、学費と奨学金制度の改善を求めて活動を続けている民間団体である。
今般、新型コロナウイルス感染症の市民生活への甚大な影響に鑑み、文部科学省及び独立行政法人日本学生支援機構に対し、以下の対策を求める。

声明の趣旨
  1. 貸与型奨学金の全ての借主・連帯保証人・保証人に対し、今後、最低1年以上の期間、一律に返還期限を猶予すること。
  2. どうしても一律に返還期限の猶予ができない場合には、返還期限猶予制度の利用基準を大幅に緩和し、必要な人がもれなく返還期限の猶予が受けられるようにすること。
    その際、特に、以下の点に留意すること。

    (1)返還期限猶予制度を利用するための現在の所得基準(年収300万円以下、年間所得200万円以下)を大幅に緩和すること。

    (2)延滞があることによって、返還期限猶予制度の利用を制限しないこと。

    (3)所得、病気、障害等について厳格な証明資料を求めず、本人の申告も含め、柔軟に対応すること。

    (4)学資金の借主・連帯保証人・保証人の全てに対し、大幅に利用基準を緩和した返還期限猶予制度を個別に周知するとともに、利用を促すこと。

    (5)相談体制を人的・物的に拡充・整備し、簡易な手続で迅速に返還期限の猶予が受けられるようにすること。

    (6)新型コロナウイルスによる市民の経済生活、社会生活への影響が消滅したことが確認されるまでの間、今後利用する返還期限猶予制度の期間は、現在の利用可能期間である10年に算入しないこと。

声明の理由
  1. 新型コロナウイルスが市民生活に甚大な影響を与えている。
    政府が、新型コロナウィルスの感染拡大防止の観点から、小中高の休校措置等を要請したことを受け、地方自治体や企業、民間団体・個人が、文化やスポーツはじめ各種イベントの中止、時差出勤や在宅勤務の奨励、パート・期間労働者等への出社の自粛要請など、経済活動の制約を中心とした前代未聞の「自粛」の流れが日に日に大きくなっている。こうした中で、賃金水準の低い勤労者、パートや期間労働者など広範な人々の賃金等が減収となり、零細な飲食店・サービス業等は売上激減・開店休業状態に追い込まれ、新卒者の内定が取り消されるなど、人々は生活苦の増大に加え、先行き不安な状態に置かれている。
    このような状況の中、学資金の返済に困難を来す人が急増し、影響の拡大につれて今後も増加し続けることが予測されるところ、これに対して、返還困難者の救済制度としてはもともと不十分な従来の「返還期限の猶予制度」等で対応するには限界がある。
  2. 新型コロナウイルスの市民生活への影響は甚大であり、その影響は、一部の人に止まらず、全市民に及んでおり、その実態を正しく把握することは困難である。今後、その影響がいつまで、どの程度、どのような形で続くのかを予想することは更に困難である。
    このことに照らせば、返還困難者の実態を正しく把握した上で個別の救済を行おうとしても、事態への対応に限界があることは明らかであり、大規模かつ十分な対策が遅れれば、事後的対応では取り返しのつかない事態が生ずる危険がある。
    よって、何よりも緊急の対応として、まずは、全ての学資金の借主・連帯保証人・保証人に対し、少なくとも1年以上の期間、無条件に返済を猶予すべきである。
  3. どうしても、そのような一律の対応が困難である場合には、新型コロナウイルスが多くの市民の生活に甚大な影響を及ぼしていることに鑑み、返済困難に陥った人が救済から漏れることのないようにする対策を至急行うべきである。
    それには、返還期限猶予制度の利用条件を大幅に緩和するとともに、制度の利用のために延滞の解消を求めるなど返還困難以外の事由に基づく従来の利用制限を撤廃し、救済制度の周知を徹底させ、受入れ体制の拡充、利用手続の簡素化を行い、あわせて、今回の特別の事態による救済制度の利用が、将来の救済制度の利用に不利益・制限をもたらさないようにする必要がある。そのため、声明の趣旨2項記載の各対策を求める。

文  部  科  学  省  御中
独立行政法人日本学生支援機構 御中

2020年3月19日

奨学金問題対策全国会議     
共同代表  大  内  裕  和
共同代表  伊  東  達  也
事務局長  岩  重  佳  治