国際人権A規約13条2項(e)は、日本政府の訳ではこのように
2 この規約の締約国は、1の権利の完全な実現を達成するため、次の
(e)すべての段階にわたる学校制度の発展を積極的に追求し、適
日本では、給付であれ、貸与であれ、およそ学修継続を目的に学生
したがって、一定の国費が投入されている日本学生支援機構が貸与
しかし、国際人権規約のこの条文は、本来給付制奨学金の設立を求
国際人権A規約31条1項には、規約の正文が定められている。
1 この規約は、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語
つまり、日本語訳は法的には何ら拘束力はないのであり、国際人権
○中国語
(戊)各级学校的制度,应积极加以发展;适当的奖学金制度,应予
○英語
(e) The development of a system of schools at all levels shall be actively pursued, an adequate fellowship system shall be established, and the material conditions of teaching staff shall be continuously improved.
○フランス語
e) Il faut poursuivre activement le développement d’un réseau scolaire à tous les échelons, établir un système adéquat de bourses et améliorer de façon continue les conditions matérielles du personnel enseignant.
○ロシア語
(e) должно активно проводиться развитие сети школ всех ступеней, должна быть установлена удовлетворительная система стипендий и должны постоянно улучшаться материальные условия преподавательского персонала.
○スペイン語
e) Se debe proseguir activamente el desarrollo del sistema escolar en todos los ciclos de la enseñanza, implantar un sistema adecuado de becas, y mejorar continuamente las condiciones materiales del cuerpo docente.
まず、英語の”fellowship”とは、“money given to a student to allow them to continue their studies at an advanced level.”とされるから、給付制をいうものである(貸与制は
次に、中国語で「奖学金」は給付奨学金を意味する。例えば、「国
フランス語はよくわからないので、フランス留学中であった友人に
スペイン語では”becas”が”beca”の複数形であり、“
ロシア語については不明であるが、少なくともいずれにおいても、
そうすると、日本政府が”fellowship”, “bourse”, “beca”, “奖学金”を単純に「奨学金」と訳したのは、誤訳と言ってもよい
日本政府は、民主党政権下の2012年9月11日に13条2項(
したがって、留保撤回以前から、給付制奨学金制度を国が設けてい
近時、ようやく国レベルで給付制奨学金が導入されたが、「適当な
国際人権規約が、あえて給付制奨学金を設けることを明記するほど
これを踏まえ、給付制奨学金を「適当な」といえる水準に引き上げ
※本稿は2014.4.26に作成し、作成者のウェブサイトで公
(http://wriver.my.coocan.jp/ga
奨学金問題対策全国会議事務局次長 弁護士 西川治