当会では、我が国から「奨学金被害」をなくし、真に学びと成長を
PDFファイルとして公開させていただきます。ご自由に利用して頂いて構いませんので、学費・奨学金問題の理解
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当会では、我が国から「奨学金被害」をなくし、真に学びと成長を
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独立行政法人日本学生支援機構の学資金貸与制度では、個人保証の場合、連帯保証人と保証人の2名が必要とされ、連帯保証人には全額の支払義務があるのに対し、保証人には、法律上、頭数で割った金額つまり2分の1の支払義務しかありません。
しかし、機構は、学資金の借主の保証人に対し、組織的に全額請求を続けていたことが、報道等により明らかになりました。
これを受けて、当会議では、下記の要領で「奨学金の保証人ホットライン」を実施します。
今回のホットラインでは、他に連帯保証人がいるのに、全額請求された、全額を支払う約束をさせられた、全額支払ってしまった、半分を超えて支払った分を返してほしいなど、保証人からの相談を中心に、弁護士・司法書士が相談に応じます。
また、ご自身が奨学金を借りている方、連帯保証人になっている方などからの相談にも対応します。
奨学金の返済等でお困りの方など、お一人で悩まずに、気軽にご相談下さい。
また、一人でも多くの方が相談できますよう、関係各位には、拡散にご協力をいただきますよう、お願い致します。
当会議は、独立行政法人日本学生支援機構に対し、学資金の借主の保証人が有する分別の利益を無視して保証人に全額請求する行為を直ちに止め、あわせて、これまで分別の利益を無視して保証人から取得した法律上支払義務のない金員は、保証人が敢えて返還を求めない場合を除き、これを直ちに全額返還するよう求める。
1 独立行政法人日本学生支援機構(以下「機構」と言う)の学資金貸与制度では、個人保証が付される場合、制度上、連帯保証人と保証人の2名が必要とされる。
この場合、本人が支払わないと、連帯保証人には全額の支払義務があるのに対し、保証人には、法律上、頭数で割った金額すなわち2分の1の支払義務しかない。
これを保証人の「分別の利益」という(民法第456条、第427条)。
2 しかるに、朝日新聞の2018年11月1日付の記事によれば、機構は、本人と連帯保証人が返せないと判断した場合、保証人に全額を請求し、その際、返還に応じなければ法的措置を取る旨も伝えていることが明らかになった。
機構によると、2017年度までの8年間で延べ825人に全額請求し,総額は約13億円、9割以上が裁判などを経て応じたという。
かかる請求は、保証人に対し、法律上支払義務のない金員の支払いを求める行為であり、法律上原因のない請求である。2分の1を超える金員を保証人から取得すれば、保証人が支払義務のないことを知りながら敢えて支払った場合以外は、その財産権の移転は法律上正当化されず、不当利得として、保証人の返還請求の対象となるものである。
上記記事によると、機構は、「法解釈上、分別の利益は保証人から主張すべきものと認識している」、「法的に問題のない請求」と説明しているとのことであるが、完全な誤りである。分別の利益は、もともと連帯保証人と保証人の2人の保証人がいる場合には、当然に、保証人の支払義務を法律上2分の1に減ずるものであり、保証人が分別の利益を主張するか否かとは全く関係がない。
機構は、保証人に対し、もともと、法律上、2分の1の金額の請求権しかないのであり、保証人には2分の1の支払義務しかない。
保証人に対する全額請求は、保証人に対し、義務なき支払いを求める行為以外の何ものでもない。
このような機構の請求は、分別の利益を知らない保証人の法的知識の欠如につけ込んで、法律上正当化されない金員の取得を目指すものであり、かかる行為を組織的に行ってきたことは極めて不当であり、大きな社会的非難を免れない。
3 なお、分別の利益は、訴訟法上、いわゆる抗弁と位置づけられているが、それは、機構の全額請求を正当化するものでは断じてない。
分別の利益は、消滅時効の抗弁のように債務者の主張によって効果を生ずるものではなく、当初から、保証人の支払義務の範囲が法律上2分の1に減ぜられるものだからである。
これに関し、同じく抗弁と位置づけられる弁済の抗弁について言えば、例えば100万円の貸金のうち借主が30万円を弁済すれば、(利息や損害金を考慮しなければ)残債務は70万円であって、貸主が法律上70万円を超えて請求することはできない。
この場合、貸主が30万円の弁済の事実を知りながらそれに触れないで100万円を請求すれば、架空請求であるとの非難を免れないであろう。
分別の利益が抗弁であることが機構の全額請求を正当化するものではないことは、上記からも明らかである。
「抗弁」という分類は、当事者ではない裁判所の判断の枠組みを定めるものであって、法律上根拠のない請求を正当化する仕組みではない。
4 報道によれば、機構は、本年11月2日、学資金を返還中の保証人の一部について救済する考えを示し、全額の返還請求を受けて機構との返還計画に合意して返還中の保証人については、分別の利益を主張すれば減額に応じる旨を表明したとのことである。
しかし、そもそも保証人は、分別の利益を主張するか否かに関わらず、当初から全額の支払義務がないのであるから、減額の対象を分別の利益を主張した保証人に限るべきではない。
これに関し、機構は、すでに返還した額が総額の2分の1を超えている場合、超過分=過払金の返還に応じないとしているとのことだが、超過分の返還合意は、保証人が超過分の支払義務がないことを知りながら合意したのでない限り、保証人の法的知識の欠如につけ込み、保証人の錯誤を利用してなされた合意であるから、超過部分につき無効である。よって、超過分=過払金は直ちに返還すべきである。
更に、機構は、返還を終えた人や、裁判の判決や和解で返還計画が確定した人は、返還中でも減額に応じないとしているとのことである。
しかし、保証人が総額の2分の1を超えて返還をした場合、超過分は機構の悪意による不当利得(民法第704条、第703条)として、機構は利息を付けて返還するとともに損害賠償をする法律上の義務を負うのであるから、返還を終えた人に対する返還を拒む正当な理由は何ら存在しない。
機構が訴訟の場で保証人に対して全額請求をし、保証人がこれを争わずに全額の支払いを求める判決が出されて確定している事案、または訴訟上の和解が成立している事案においても、もともと、保証人に全額の支払義務がないこと、及び機構には保証人に対して全額を請求する権利はないことに変わりない。
機構は、減額に応じない理由につき「法的に問題のない請求に基づいているため」と説明しているとのことだが、そもそも、2分の1を超える超過分につき、機構は保証人に対する法的請求権を有しない。
このような判決・和解は、機構の法律上根拠のない全額請求と保証人の法的知識の欠如によって得られたものに過ぎないから、法的に問題のない請求に基づいているとの説明は完全な誤りであり、減額を拒む理由たり得ない。
なお、もし、機構が、裁判所を利用した回収すなわち支払督促手続及び訴訟手続において、保証人のほかに連帯保証人が存在することを主張において明らかにしないまま、保証人に対する全額請求をし、これを認容する判決を取得していたとすれば、判決の不正取得であるとの批判を免れない。
5 よって、当会議は、機構に対し、保証人に全額を請求する行為を直ちに止めるよう求めるとともに、これまで分別の利益を無視して保証人から取得した法律上支払義務のない金員を直ちに全額返還するよう求める。
あわせて、これまで何人の保証人に対して2分の1を超える金額をいくら請求し、何人の保証人から2分の1を超える金額をいくら回収したかを、直ちに精査の上、その結果を公表するよう求める。
なお,返還後の本人・連帯保証人との関係については,本件の原因が機構の保証人の法的知識の欠如につけ込む極めて不当な回収方法にあることを踏まえ,適切な対応が必要である。
6 保証人が複数存在する場合に、分別の利益を無視して、保証人に対して全額を請求するような行為は、社会問題化したサラ金被害においても、商工ローン被害においても、過去に行われたことがない極めて不当な行為である。
ちなみに、貸金業者に適用される貸金業法第12条の6第1号は「貸金業者が資金需要者等に対し、虚偽のことを告げ、又は貸付けの契約の内容のうち重要な事項を告げない行為」を禁止し、金融庁のガイドラインは「資金需要者等が契約の内容について誤解していること又はその蓋然性が高いことを認識しつつ正確な内容を告げず、資金需要者等の適正な判断を妨げること」は、これに該当するおそれが大きいことに留意する必要があるとしている。
学資金の貸与事業は教育の機会均等を図るための重要な事業であるが、だからこそ、その原資の一部が法律上の根拠なく、保証人の法的知識の欠如につけ込んで回収された金員であるという事実に驚きと怒りを禁じえない。
かかる行為を公的機関が組織的に行うことは、断じて許されるものではない。
当会議は、機構に対して、猛省を求めるとともに、かかる事態は法令違反もしくは著しく適正を欠くものであったにもかかわらず、これを放置し、独立行政法人通則法所定の措置をとらなかった文部科学省に対しても、猛省を求めるものである。
独立行政法人日本学生支援機構 御中
文 部 科 学 省 御中
奨学金問題対策全国会議
共同代表 大 内 裕 和
共同代表 伊 東 達 也
事務局長 岩 重 佳 治
【シンポジウムのお知らせ】
当会の設立5周年を記念して4月21日(土)にシンポジウムを行います。是非ご参加ください!
奨学金問題対策全国会議 設立5周年集会
「高等教育無償化・奨学金 『誰のため 何のためか』」
(チラシPDFファイルダウンロードはこちらをクリックしてください。)
◆日時:2018年4月21日(土)
13:00~17:00(開場12:30)
◆場所:早稲田奉仕園 スコットホール
東京都新宿区西早稲田2-3-1
東京メトロ東西線「早稲田駅」2番出口 徒歩5分
東京メトロ副都心線「西早稲田駅」2番出口 徒歩8分
◆内容
5周年 特別記念講演
「高等教育の漸進的無償化を~大人の学びと雇用のために~」
東京工業大学名誉教授 矢野眞和 氏
対談
「奨学金という呪い-就職・結婚・出産」
作家・活動家 雨宮処凜 氏
中京大学教授 大内裕和 氏
当事者の方、若い世代からの発言など
埼玉奨学金問題ネットワークが書籍『奨学金 借りるとき返すときに読む本』(弘文堂)を出版しました。
主に日本学生支援機構奨学金について、借りるときに注意すべき点、返済が難しくなった際の救済制度、延滞するとどのようなことが起こるのか、実際の日本学生支援機構との裁判例などについて紹介していますのでぜひご一読ください。
日本の奨学金が未成年者を対象としたローンであり、返済できないと訴訟トラブルに発展する現状が社会問題となっています。
しかし、正しい知識を持ち、無理なく利用すれば、奨学金は進学の心強い味方です。
本書は二部構成で、第一部では奨学金を借りる前に知っておきたい基礎知識と賢い利用方法を紹介し、第二部では返済に行き詰まったときになにが起こるか、どう対処すればよいのか具体的に説明しています。
奨学金を賢く利用して夢をかなえるために、本人はもちろん保護者や教職員も必読の一冊です。
下記の要領で「奨学金返済問題ホットライン」を実施しますので、奨学金の返済等にお困りの方はお電話下さい。
フリーダイヤルですので、通話料はかかりません。
中央労福協(労働者福祉中央協議会)では「給付型奨学金制度の創設等を求めるアピールへの賛同(団体・個人)のお願い」を実施しております。
下記署名フォームから署名ができますので、みなさま是非ご協力を宜しくお願いします。
10月12日のTBSラジオ「荻上チキ・Sesson22」に岩重佳治弁護士が出演しました。
大部分の大学生にとって、もはや大学生活は「レジャーランド」「モラトリアム」ではなくなりました。
「青年の貧困化」が指摘されるなかで、大学生が抱える問題にもっと社会的に焦点があたるべきではないでしょうか。
その極めて身近でホットな問題が、「奨学金」と「ブラックバイト」です。
なかでも、「奨学金問題」は最近社会的関心が高まり、国会での論戦や安倍首相の「給付型奨学金創設」表明など、状況に大きな変化も起きつつあります。
当事者である学生が、卒論のテーマに「奨学金問題」を設定して解明することは、この動きをさらに拡大することになります。
すでに、「奨学金問題と学費を考える兵庫の会(略称:兵庫・奨学金の会)」では3人の方の卒論に協力してきました。
そこで、奨学金問題対策全国会議設立3周年集会で、「卒論のテーマを『奨学金問題』に!」と呼びかけた結果、皆さんに賛同していただきました。
ともかく、一人でも多くの学生の方に、「奨学金問題をテーマにした卒論」に取り組んでいただきたいのです。
考えられる課題例を下に列記してみました。
全国会議での体制がまだ整っていませんので、当面「兵庫・奨学金の会」が窓口として対応します。質問・協力申し込みは、「兵庫・奨学金の会」のホームページの「お問い合わせ」でお寄せください。
発表の場としては、奨学金問題対策全国会議のシンポジウムなども検討しています。
(1)「奨学金」と大学生活・意識
① なぜ、半数の大学生が奨学金を借りているのか
② どんな思いで受けているのか
☆「共通調査表」を「兵庫の会」で作成中
(完成しだい「兵庫・奨学金の会」のホームページに掲載)
(2)日本における「学費」と「奨学金制度」の歴史
① 大学の学費が急増した理由
② なぜ国の奨学金は「貸与」だけか
③ どのような経過で「有利子奨学金」が激増したのか
④ 「受益者負担論」に説得力はあるのか
(3)日本学生支援機構の役割と問題
① 「日本育英会」から「日本学生支援機構」になったことで
どのような変化が起きたのか
② 「厳しい取りたて」の実情
③ どのような改善を求められているのか
「奨学金問題対策全国会議」の要求と日本学生支援機構の対応
(4)諸外国との比較
① 諸外国では「学費」と「奨学金」はどうなっているのか
② 「学費=ゼロ、給付型奨学金」の国は、
どのような意識で制度が維持されているのか
(5)経済的、社会的及び文化的権利に関する国際(国連)規約
-教育の無償化に向け、漸進的にその導入を目指す
① 日本政府がとった経過
なぜ、高等教育については留保されたのか
② 現状と今後の方向
2012年に留保は撤回されたが、文科省はどうしようとしているのか