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2013年

1 制度内救済-④返還免除-

④返還免除

Q 返還が免除される場合がありますか。その例として、どのような場合がありますか。
A 返還が免除される例としては、
①本人が死亡し返還ができなくなったとき
②精神若しくは身体の障害により労働能力を喪失又は労働能力に高度の制限を有し(症状固定または回復の可能性がないことを要する)、返還ができなくなったとき(注)
③大学院生の無利子奨学金で、特に優れた業績による返還免除を願い出て認められた場合
などに全部又は一部の免除ができるなどとされています。
(注) 回復の可能性との関係で、何度か猶予を繰り返さないと免除の申請ができないと言われたケースがありますが、制度上はそのような制限はないはずです。
※ 免除制度の利用にも、延滞金の解消が必要だとされています。

(参考)本人が死亡した場合の返還免除制度と保証人
本人が死亡した場合、保証人は当然には返還免除となるわけではないようです。
一部情報によると、以前は、本人名の死亡届が提出されると連帯保証人と保証人も 自動的に返還免除とされていたようです。しかし、現在では、「返還免除願」を提出し、保証人が返還できない理由(例えば「年金生活等」)が認められると、免除となる扱いがなされているようです。
なお、本人が死亡した場合に保証人が返還するときの延滞金の減免については上記③延滞金減免を参照して下さい。

(解説)免除の願出に必要な書類
死亡による免除のとき
(1)奨学金返還免除願
 (相続人、連帯保証人連署。機関保証制度加入者は相続人)
(2) 本人死亡記載の戸籍抄本、個人事項証明書か住民票等公的証明書
 (コピー不可)

精神若しくは身体の障害による免除のとき
(1) 奨学金返還免除願
 (本人、連帯保証人連署。機関保証制度加入者は本人のみ)
(2) 返還する事ができなくなった事情を証する書類
 (家庭状況書:本人及び連帯保証人の状況。連帯保証人の資力要件は年収300万円以下とのこと。機関保証制度加入者は本人の状況)
(3) 医師又は歯科医師の診断書
 (日本学生支援機構所定の用紙)
※ 教育職の免除制度は1998年3月31日に廃止されました。
※ 大学院無利子奨学金貸与者の教育職・研究職免除制度は2004年3月31日に廃止されました。

1 制度内救済-③延滞金減免-

③延滞金減免

Q 大学で有利子奨学金を400万円借り、200万円返したところで精神疾患から失業し、その後、奨学金を返せないでいたところ、機構から、高額の延滞金を含めて請求を受けました。そこで、昨年からアルバイトをしながら毎月少しずつ返済していますが、それにもかかわらず請求金額が増えています。どうしてでしょうか。
A 返還金の充当順位は督促費用,延滞金,利息,割賦金(利息を除く)の順になります。質問の場合、延滞金は、現在残っている元金に対して年利10%かかりますので、返済額がその時発生している延滞金と利息の金額に満たないと、元金に充当されず、そのため元金は減らずに、逆に元金に更に延滞金が付加されることによって、返しても返しても金額が減らず、むしろ増えていくという状態になる場合があります。
延滞金についての詳細は以下のとおりです。

(解説)延滞金
第一種奨学金
2004年度以前の奨学生
 =約束の返還期日を6ヶ月過ぎるごとに、延滞している元金に対し、5%の延滞金。
2005年4月以降の奨学生
 =延滞している元金に対し、年(365日)あたり10%の割合で返還期日の翌日から延滞している日数に応じて延滞金。

第二種奨学金
返還期日を過ぎると、延滞している割賦金(利息を除く)の額に対し、年(365日)あたり10%の割合で返還期日の翌日から延滞している日数に応じて延滞金。

※本人が延滞すると、連帯保証人・保証人へ請求されます。
※機構との相談がなく延滞状態が9ヶ月続くと法的手続が取られることがあります。

Q 延滞金が減免される場合がありますか。どのような場合に減免されますか。
A 延滞金が減免される場合としては、次のようなものがあります。
①本人、連帯保証人又は保証人の責めに帰することができない事由により延滞金が生じて延滞金を請求することができないことが適当でないと機構が認定したとき
②以下のアイウいずれかに該当し、分割返還計画書が提出され、これを機構が承認した場合
 ア 本人が死亡又は精神的若しくは身体の障害により返還ができない状態で、連帯保証人又は保証人が返還するとき
 イ 本人、連帯保証人及び保証人から返還することが困難で第三者が返還するとき
 ウ 本人からの返還が困難な状態にある場合で、連帯保証人又は保証人が最終の割賦金の返還期日の5年以上前までに返済未納額の全部を分割返還計画書に従い1 年の期間内に返還するとき
③本人からの返還が困難な状態にある場合で、連帯保証人、保証人又は第三者が最終の割賦金の返還期日の5年以上前までに返済未済額の全部を一時に返還するとき

(解説)延滞金減免制度
延滞金に関して「延滞金の減免に関する施行細則」が2005年2月4日に施行され、2010年一部改訂されています。
しかし、減免を願い出る書式は一般的には入手できないようです。延滞金減免の申請に必要な書類を機構から直接入手する場合は、「返還係」に施行細則に基づいて申請する旨を伝えることから始めます。

1 制度内救済-②減額返還制度-

②減額返還制度

Q 大学で奨学金を借り毎月2万円返しています。不況で収入が減り月2万円を返済に当てることができません。返済額を減らすことはできますか。
A 災害、傷病、その他経済的理由により奨学金の返還が困難な方の中で、当初約束した割賦金を減額すれば返還可能である方に対して、一定の要件に合致する場合、一定期間、1回当たりの当初割賦金を2分の1に減額して、減額返還適用期間(最長10年)に応じた分の返還期間を延長する制度(減額返還)があります。
※ 返還期間が延長されますが、第二種奨学金における利息の総支払額に変更はありません。
※ 機関保証制度においては、保証機関が延長されることによる保証料の追加徴収はありません。

(解説)減額返還制度の適用条件

  1. 災害、傷病、その他経済的理由により奨学金の返還が困難であること。
    経済的事由の場合は、目安として給与所得者は年間収入300万円以下、それ以外の場合は所得200万円以下。
  2. 願い出の時点で延滞していないこと。
    延滞金が発生している場合には、延滞金を全て支払って延滞を解消しなければ願い出ができません。
  3. リレー口座加入者であること。
    リレー口座(奨学金を金融機関の口座から自動引き落しで支払うための口座)未加入の方については、リレー口座手続きの終了後に、「預・貯金者控」(金融機関受付印があるもの)のコピーを「奨学金減額返還願」に添付して願い出てください。
  4. 月賦により返還していること。
    月賦以外の返還方法(年賦、半年賦、月賦・半年賦併用)で返還している方は、減額返還の承認により自動的に月賦の返還方法に変更され、減額返還の終了後も継続されます。
    ※ 月賦・半年賦併用返還の方は、減額返還適用後も月賦返還額は適用前とほぼ同額となります(月賦返還へ変更した時点で月賦返還額が倍額となり、それを1/2に減額するため。)ただし、1月・7月の半年賦分はなくなります。
  5. 個人信用情報の取扱に関する同意書が提出されていること。
    平成21年度以降に機構の奨学生として採用されるには、同意書の提出が奨学金貸与の条件とされ、それ以前の奨学生については同意書の提出は任意ですが、減額返還制度を利用するには、平成21年度以前の奨学生についても同意書の提出が必要です。

1 制度内救済-①返還期限の猶予-

①返還期限の猶予

Q 3月に大学を卒業しましたが、新卒採用されず現在も就活中です。アルバイトをしていますが、収入が少なく、機構の奨学金を二つ借りていたので返還額が大きく返還できそうにありません。奨学金の返還を一定期間猶予してくれる制度はありますか。
A 一定の返還できない事情があるとき、願い出と証明書を提出して、返還を一時停止して先延ばしする制度(返還期限の猶予制度)があります。返還期限の猶予が認められると、猶予期間中は利息と延滞金が発生しません。一度の願い出で最大1年間猶予することができます。
全額を猶予する方式と半額だけ猶予する方式があります。
第1種と第2種の両方を利用している場合、金額を合計して返済期間を延ばして(最長20年)毎月の負担額を減らす方法や、一時的に片方の奨学金のみ猶予を申請する方法もあります。

(解説)返還期限の猶予
・期間;通算で60ヶ月(5年)が限度。ただし災害、傷病、生活保護受給中、産休
・育休中、大学等在学、海外派遣の場合は制限なし
・「経済困難」認定の所得;給与所得者は年収(税込)が300万円以下、その他は年間所得(必要経費等控除)が200万円以下が目安
・必要書類;猶予願用紙は機構HPから入手可。
 →必要書類は機構のHPで確認
 (返還期限の猶予がなされる場合)
 要返還者(本人)が災害又は傷病により返還するのが困難になったとき
 高等学校、高等専門学校、大学、大学院、専修学校の高等課程などに在学している場合
 外国の学校にて在学又は研究に従事している場合
 生活保護を受けているとき
 その他やむを得ない事由により返還が著しく困難(失業、経済困難。原則として給与所得者は年収300万円以下、それ以外の所得者は年収200万円以下だが、例外あり)
 特に優れた業績による返還免除を願い出たとき
 産前産後の休業期間、育児休業期間などで返済が著しく困難になったとき
 青年海外協力隊などによる海外派遣の場合
 その他法令に基づく事由により返還できない場合

Q 5年前に失職し、その後、派遣社員等で年収200万円以下となり、奨学金が返せないまま延滞状態が続いていました。支払いが困難であった時期に遡って返還期限の猶予を受けることはできますか。
A 過去に返還期限の猶予に該当する事由があれば、過去にさかのぼって猶予申請をすることになります。
但し、これには様々な利用上の条件があるので注意が必要です(後記「※」参照)。

(解説)複数年の猶予申請
奨学金返還期限猶予願は1年ごとに証明書を添えて願い出が必要です。
複数年猶予を希望される場合は、延滞が始まった年月から1年ごとに「返還期限猶予願」と「所得証明書」等事由に合った証明書を添付して願い出ていただくことにより審査を致します。ただし、猶予期間は災害・傷病・生活保護受給中等の場合を除き通算5年(60ヶ月)が限度です。

(例)2008年6月分から延滞、2012年5月まで4年間を経済困難で猶予希望
(猶予後の返還開始期日2012年6月)猶予願は4枚必要(1年ごとに作成)
 希望猶予期間
  (1)2008年6月から2009年5月まで
  (2)2009年6月から2010年5月まで
  (3)2010年6月から2011年5月まで
  (4)2011年6月から2012年5月まで(12ヶ月以内の希望する月まで)

※延滞の解消が必要
過去に遡って返還期限の猶予を申請する際に、遡って返還期限の猶予をしても解消されない延滞金がある場合には、その延滞金を支払って延滞を解消しなければ、猶予の審査を受けられない扱いがなされているようです。
「内規」と呼ばれる非公表の基準によってそのような扱いがなされているとのことであり、不当だと思われます。